私の終活(2)人生の回顧

 私は後ろを振り向かないように生きてきた。それは避けていたわけではなく余裕がなかったのである。現役時代はその時々を生き抜くことに精一杯であった。

 今は隠退して七六年の歳月を振り返り悲喜こもごもの場面を回顧している。私はそれも終活の一つであると思っている。 

 私は死ぬと不要になる物、家族の迷惑になる物の整理を始めている。私が逝った跡を見苦しくないようにしておきたいのである。それは体力がある間に済ませなければならない作業である。

 全ての人が裸で生まれる。そして裸で死んで逝く。神の国には世俗の朽ちる物を一切持ちこめないのである。人が蔵に蓄えた物も体に蓄えたものも知恵も知識も想い出も全て朽ち果てるものである。

 私は高価な物を持っていないので惜しまず捨てられる。しかし捨て難いのは想い出である。良い想い出も悪い想い出も捨て難い。

 私は人生の節々で多くの人たちと出会い教え導かれ支えられて来た。改めて人生を振り返ると、私は感謝の足りない人間であり、過ちを率直に詫びることも足りない人間であったことに気付かされて恥じ入るばかりである。

 

ー聖句ー

 「 兄弟たち、わたしはこう言いたいのです。肉と血は神の国を受け継ぐことはできず、朽ちるものが朽ちないものを受け継ぐことはできません。」  1コリ15章50節